丘修三「あんちゃんがいく」のもついとおしさ


丘修三の小説の主人公のおおくは「障害を持ったお姉さんやお兄さん」を持つ「ぼく」なのです。
今読んでいる「あんちゃんが行く」(丘修三著 岩崎書店 1300円 19921年)もそういう傑作です

美空ひばりと誕生日が同じだというのが自慢のぼくのあんちゃんは19歳。ぼくと8つも年が離れてい
る。
中学の障害児学級を卒業して仕事に就いたあんちゃんは、頭が弱いけれど木はやさしくて力持ち、ぼ
くはずいぶん助けてもらった。
あんちゃんはいろいろなところで働いたが、行く先々で騒動を起こし、何度もクビになった。そのた
んびに安田センセの世話になった。
ある雨の日、あんちゃんはどこか品のあるひとりの老人を家に連れてきた。長井さんというその老人
との出会い、あんちゃんの恋、そしてぼくの初恋……………。いろんなことのあったあの一年、あん
ちゃんのすごさと人を恋する切なさを知ったのだった。

この長井さんというのがクリスチャンで、長井さんをとおしてあんちゃんは神様とも出会うのですね

もうひとつこのあんちゃんたちのぼくの家族は大阪弁を使っています。
この大阪弁がまたみごとなのです。

明るく楽しく、随所で吹き出してしまうような笑いを誘うのですが、でもそれが少しずついとおしさ
、切なさ、やりきれなさに変わっていきます。
この人の作品を読んでいると、障害者が不幸だと決めつけることができなくなるのです。
でも同時に胸が焦がれるような「いとおしさ、切なさ、やりきれなさ」も感じさせてくれます。