ご褒美は成績の一番悪い子にあげよう

この1節だけでこの本を読んでよかったと思わせる本が 

あります。
それは、女優の永岡輝子さんの「父からの贈り物」(草想社 1984年刊)とい
う本の中の一節でした。
引用します。

 学期末、通信簿を渡される日はほんとうにつらかった。兄も姉も妹も、みん
な成績がよかった。ことにみいちゃんは負けず嫌いで、一番でなければ絶対承
知できなかった。ところが私はいつも中の部でとびきりよいのはひとつもなか
った。父は子どもたちの成績表を見ると
「一番成績の悪い子にご褒美をあげよう。一番つらい思いを我慢しているのだ
からね」
と言った。私はまったくそのとおりだと思うと、父の心遣いにまたベソをかい
てしまうのだった。父は兄の顔を見ると「勉強しなさい」と言っていたが、小
学生の私にはなにも言わなかった。

映画女優の文章というのは、高峰秀子さんや富士真奈美さんなど名文が多いの
ですが、これもその中に加えられるものです。

教えるものとして、本当はこうありたいと思うのですが、なかなかこうはいか
ないところがつらいところです。
担任として成績表を配るときに、この話を紹介して「わたしも本当はご褒美は
一番成績の悪い子にあげたい」と言ったことがありますが、生徒からは何の反
応もなかった……………。
教員としていってはいけないことだったのかも……………。